導入 GAPS 食事療法

ナターシャ・キャンベル・ マクブライド博士は、全てのGAPS患者に、まず導入食事療法を実践してからフルGAPS食事療法に進むことを推奨しています。症状の程度によって導入食事療法に要する期間は変わります。進行を早めるか、より時間をかけるかは、患者の状態を見ながら調整します。始める前に、以下のポイントを確認すると役立ちます。詳細については、キャンベル・ マクブライド博士の著書「Gut and Psychology Syndrome(邦題:腸と心の症候群)」を参照してください。GAPS食事療法を効果的に実践するには、この本を読む必要があります。

深刻な消化器系障害(下痢、腹痛、鼓張、一部の便秘症状など)がある場合は、導入食事療法をくまなく実践しなければなりません。導入食事療法はそれらの症状を速やかに軽減し、消化システムの治癒プロセスを開始させます。健康な人でも、腹痛や下痢の時に導入食事療法を実践すると、薬を使わなくても大体すぐに症状が治まり、再発しなくなります。

便秘

頑固な便秘の場合は、食事療法の早い段階(第2ステージ)で絞りたての手作り野菜・フルーツジュースを使います。まず朝起きたらすぐにニンジンジュースを飲み、同時にタラの肝油(コッドレバーオイル)を摂取しましょう。頑固な便秘は胆汁生産不足が原因であることが多いので、胆汁生産を促すこのジュースが効果的です。胆汁が不足すると食物中の脂肪が十分に消化されず、その脂肪が塩分と反応して石鹸成分となり、便秘を引き起こします。乳製品の除去も便秘症状を軽減する可能性があります。

食物アレルギーと不耐症

食物アレルギーや不耐症がある人は、保護膜である腸の上皮を修復し、腸表面全体がしっかりと覆われる状態にしなければなりません。そのために導入食事療法の実践が必要です。アレルギーや食物不耐症は、異常な腸内細菌叢によって腸上皮が損傷している「リーキー・ガット(腸管浸漏)」という状態が原因となって起こります。この状態では、食物が十分に消化されないまま損傷した腸壁を通って吸収され、それを攻撃するための免疫システムを作動させます。アレルギーの場合、どの食物に反応するのかを特定するため、検査をするのが一般的ですが、腸壁が損傷していると、ほぼ全ての食物が不完全消化のまま吸収される可能性が高くなります。それに対するアレルギー反応はすぐに現れることもあれば、遅れて(1日後、2〜3日後、または数週間後)現れる場合もあります。様々な食物に対する反応が重複すると、その日に出た反応が何に対する物なのか、特定することは不可能です。また、皆さんご存知の通り食物アレルギー検査自体が信頼できない物です。ですから、例えば2週間にわたり、毎日2回ずつ検査することが可能な場合、食べた物全てに対して「アレルギー有り」の結果が出てしまうでしょう。腸壁の損傷状態が続く限り、あらゆる食べ物を排除しても問題を取り繕うに過ぎず、良い方向には向かいません。私の臨床経験から言うと、最良の治療法は導入食事療法で集中的に腸壁を修復することです。一旦腸壁を修復すれば、食物が完全に消化されてから吸収されるようになり、大半の食物不耐症とアレルギーが解消します。

深刻な消化器系障害や食物不耐症が無い場合は、導入食事療法を短期間で終えることができます。しかしながら、導入食事療法を飛ばしてフルGAPS食事療法から始めようとしないでください。腸と身体全体の治癒プロセスを最も効率的に進めるには、導入食事療法の実践が最適です。導入食事療法を飛ばしてしまうと、問題が長引き、治療が難しくなる可能性があります。

導入食事療法を飛ばして、フルGAPS食事療法から開始する場合は、患者の毎日の食事の約85%が、肉、魚、卵、発酵乳製品、野菜(十分火を通した物、発酵させた物、生の物を組み合わせること)で構成されるようにしてください。焼き菓子と果物は数週間避けます。その後もこれらは間食にとどめ、主食にはしないでください。自家製のミートストック、スープ、シチュー、天然の脂肪は必須食品ですので、患者にはこれらを中心とした食事を摂らせましょう。

注意:導入食事療法から開始すると、フルGAPS食事療法から開始した場合よりも早く乳製品を導入できます。乳製品の導入前には、必ず感受性テストを行ってください。

導入GAPS食事療法  食事療法の実践

ナターシャ・キャンベル・ マクブライド博士考案

1. 導入GAPS食事療法

2. フルGAPS食事療法と献立例

導入食事療法

・毎朝

患者が朝起きたらすぐにカップ1杯の真水(炭酸水でない)か濾過水を飲ませ、プロバイオティクスを摂取させます。冷水は患者の症状を悪化させるので、必ず白湯か常温の水を飲ませましょう。

推奨食品リストに記載されている食品のみを食べます。それ以外の食べ物を患者に食べさせてはいけません。導入食事療法の第1ステージを実践すると、腹痛、下痢、便秘の最も重い症状が速やかに軽減されます。新しい食べ物を食べさせ、下痢、腹痛などの消化器系症状がぶり返す場合は、患者がまだそこまで改善していないということです。一旦その食べ物を止め、1週間後に再度試してください。

特定の食品に対するアレルギーが疑われる場合は、導入前に感受性テストを行ってください。

・感受性テスト

就寝時に、テストしたい食べ物を1滴(固形物の場合は、すりつぶして少量の水と混ぜてください)、患者の手首の内側に垂らします。皮膚の上で乾かしてから就寝させ、翌朝その箇所を確認してください。真っ赤になっていたら、その食べ物を避け、数週間後に再度テストを行ってください。反応が無い場合は、その食べ物を導入しましょう。ごく少量から初め、徐々に量を増やします。

第1ステージ

自家製のミートストックかフィッシュストック(肉か魚で取った出汁)。

このストックには、腸上皮細胞の構成成分となる栄養素が豊富に含まれ、この細胞の急速な成長をサポートし、腸の炎症を鎮める効果もあります。これによって消化が促進されます。何世紀にもわたり、このストックが消化管を癒す民間療法薬として利用されてきたのはそのためです。市販の顆粒や固形のスープの素は使わないでください。加工度が高いため自然の食べ物からは程遠く、有害物質も多く含まれています。最初は、最も胃に優しいチキンストック(鶏の出汁)から始めると良いでしょう。良質のミートストックを作るには、関節部分、骨、骨付きの肉、丸鶏、鶏・カモ・ガチョウの内臓、ハト丸ごと一羽、キジや、その他の安価な肉類を準備します。骨や関節からは、腸の修復に非常に重要な栄養素が溶け出します。これらの栄養素は筋肉部分にはそれほど含まれていないので、骨や関節を必ず使うようにしましょう。骨髄付きの大きな管状の骨を使う場合は、肉屋に頼んで骨を半分に切ってもらいましょう。こうすると調理後に骨髄を取り出せます。骨、関節、肉を大きな鍋に入れたら鍋を水で満たして火にかけ、すぐに好みの量の未加工・未精製の天然塩、小さじ1杯の粗く砕いた黒コショウの実を加えます。沸騰したらふたをし、弱火で2時間半から3時間半煮込みます。フィッシュストックを作る際は、魚丸ごと1尾か、魚の頭、骨、ヒレを使います。作り方はミートストックと同じです。煮込み終わったら骨と肉を取り出し、ストックを濾して小さな骨やコショウの実を取り除いてください。骨から軟らかい組織をできるだけ丁寧に外し、スープの具として使うために残しておきましょう。または、これらの軟組織を患者に全て食べさせましょう。骨髄付きの大きな骨を使った場合は、温かいうちに骨髄を取り出してください。木製の分厚いまな板の上で骨をたたくと取り出せます。骨の周りに付いているゼラチン質の軟組織と骨髄は、腸上皮と免疫システムを修復する最良の治療薬ですので、毎食これを患者に食べさせましょう。フィッシュストックの場合も、魚の骨と頭から軟組織を全て外し、スープの具として使いましょう。ミートストックとフィッシュストックは、冷蔵庫で最低1週間は保存でき、冷凍もできます。温かいミートストックを間食に、または食事の時に患者に飲ませ、一日中摂取させましょう。ストックを温める際はコンロを使い、電子レンジは使わないでください(電子レンジは食べ物を破壊します)。ストックに含まれる脂肪や骨の周りの脂肪は患者の治癒プロセスに必須の成分なので、これを残さず食べることが非常に大切です。ストックを飲む時に、自家製の発酵食品を加えましょう(自家製発酵食品の導入方法の詳細は後述します)。

自家製ミートストックまたはフィッシュストックで作った手作りスープ。

本のレシピの章に様々なスープの作り方を記載しました。ここでは、導入食事療法に必要な事柄を詳しく述べます。ミートストック適量を沸騰させたら、刻むかスライスした野菜を加え、25~35分弱火で煮込みます。野菜は、タマネギ、ニンジン、ブロッコリー、長ネギ、カリフラワー、ズッキーニ、スクワッシュ、カボチャなどを使います。野菜は好みの物を使いますが、キャベツ全種やセロリなど、繊維質が非常に多い野菜は避けてください。使える野菜でも、繊維質が特に多い部分は取り除きます。例えばカボチャ、ズッキーニ、スクワッシュの皮と種、ブロッコリーとカリフラワーの茎です。それ以外でも繊維質が多そうな部分は除去してください。野菜は非常に柔らかくなるまでしっかり火を通してください。野菜が良く煮えたら、ニンニクのみじん切りを大さじ1~2杯加えて再度沸騰させ、火を止めます。患者に与える際は、骨髄と骨から外した肉と軟組織を加えるようにしてください。そのまま食べても、ミキサーにかけてポタージュ状にしても良いでしょう。スープには自家製の発酵食品を加えてください(自家製発酵食品の導入方法の詳細は後述します)。このスープに骨から外した肉と軟組織を加え、一日中、患者が飲みたい時に飲ませます。

食事療法の最初から自家製発酵食品を導入することが必須。

発酵乳製品か発酵野菜を導入します。拒否反応を避けるため、最初の2~5日間は1日小さじ1~2杯、次の2~5日間は1日小さじ3~4杯と、徐々に食べる量を増やし、カップ1杯のミートストックかスープに、小さじ数杯の自家製発酵食品を加えるまで増やしてください。乳製品の導入が可能な状態であれば、自家製のヨーグルトやケフィアを使いましょう。まだ乳製品が使えない状態(感受性テストの結果、または食べると拒否反応が出る場合)であれば、ミートストックかスープに、自家製のザワークラウトの漬け汁、発酵野菜の漬け汁、野菜のミックス漬け(本のレシピの章を参照してください)の漬け汁を加えて食べさせてください。食べ物が熱いと善玉菌が死滅しますので、ある程度冷ましてから発酵食品を加えてください。

ハチミツを少し加えたショウガ茶を間食に飲む。

ショウガ茶を作るには、生のショウガをすり下ろして(小さじ1杯ほど)ティーポットに入れ、沸騰させた湯を加え、ふたをして3~5分蒸らします。注ぐ際は濾し器を使い、ハチミツを少し加えます(加えなくても良い)。

第2ステージ

第1ステージの内容を継続。

引き続き、骨髄、骨から外した肉や魚、軟組織を加えたスープを飲ませます。ミートストックとショウガ茶も続けましょう。ストックとスープには、自家製発酵食品(ザワークラウトの漬け汁、発酵野菜の漬け汁、野菜のミックス漬けの漬け汁、自家製のヨーグルトかケフィア)を加えます。

オーガニック卵の生卵黄を追加。

スープやミートストックに生の卵黄を落として食べるのがベストです。卵黄は1日1個から始め、1杯のスープに1個を加えるまで徐々に増やします。生の卵黄を順調に食べられたら、半熟のゆで卵(卵白には火が通り、卵黄は液体の状態)をスープに加えましょう。卵アレルギーの心配がある場合は、まず感受性テストを行ってください。卵黄は1日にどれだけ食べても構いません。卵黄はほとんど消化の必要がなく、素早く吸収され、患者の治癒に最重要となる素晴らしい栄養素をたっぷり含んでいます。信頼できる生産者から、新鮮な放し飼いのオーガニック卵を買いましょう。

肉と野菜のシチューやキャセロール(蒸し焼き料理)を追加。

この段階では調味料は天然の塩と新鮮なハーブに限り、スパイスを加えないでください(本のレシピの章にイタリアンキャセロールの作り方を掲載しています)。これらのシチューやキャセロールには、脂肪分がたっぷり入るようにしましょう。新鮮な動物性脂肪の摂取量が多ければ多いほど、患者の回復が早まります。料理を取り分けたら、それぞれに自家製発酵食品を加えましょう。

自家製のヨーグルトとケフィアを既に導入済みであれば、1日の摂取量を増やしましょう。ザワークラウト、発酵野菜、野菜のミックス漬けの漬け汁の摂取量も増やします。

発酵させた魚を食べさせてみましょう。1日に小さい切り身1切れから始め、徐々に量を増やしてください。作り方は本のレシピの章を参照してください。

自家製のギーを追加しましょう。1日小さじ1杯から始め、徐々に量を増やしましょう。作り方は本のレシピの章を参照してください。

第3ステージ

第1ステージと第2ステージの内容を継続してください。

完熟のアボカドをつぶしてスープに加えてください。小さじ1~3杯から始め、徐々に食べる量を増やしてください。

GAPS用パンケーキを追加してください。1日1枚から始め、徐々に量を増やしてください。

パンケーキは次の3種類の材料で作ります。1. オーガニックのナッツバター(アーモンド、クルミ、ピーナッツなど)2.卵、3.新鮮な生のカボチャかズッキーニ(皮をむいて種を取り除き、フードプロセッサーで十分にすりつぶした物)。パンケーキはギー、ガチョウの脂肪、カモの脂肪のいずれかを使って薄く小さく焼きましょう。

ギー、ガチョウの脂肪、カモの脂肪のいずれかをたっぷり使ったスクランブルエッグ。

アボカド(問題なく食べられる場合のみ)と加熱調理した野菜と共に食べるようにしましょう。加熱調理したタマネギは消化システムや免疫システムに良いので特にお勧めです。大さじ3杯のカモの脂肪かギーを鍋に溶かし、白タマネギ(大)をスライスして加え、ふたをして弱火で20~30分調理します。

自家製のザワークラウトと発酵野菜を導入しましょう(既にこれらの漬け汁を一定期間摂取している場合のみ)。

少量から始めて徐々に量を増やし、毎食小さじ1~2杯まで増やします。

第4ステージ

第3ステージまでの内容を継続してください。

オーブンでローストまたはグリルした肉を徐々に追加してください(バーベキューや、フライパンなどで油炒めにした肉、油で揚げた肉はまだ追加しないでください)。

焦げた部分や焼き色が濃い部分は食べないようにしてください。加熱調理済みの野菜とザワークラウト(もしくはその他の発酵野菜)と共に食べるようにしてください。

コールドプレス(低温圧搾)のオリーブオイルを料理にかけて食べてください。1食につき数滴から始め、1食につき大さじ1~2杯まで増やしてください。

絞りたての野菜ジュースとフルーツジュースを飲み始めましょう。スプーン数杯のニンジンジュースから始めます。

ジュースは十分に濾して、固形分を取り除きましょう。このジュースをそのまま患者にゆっくり飲ませるか、温かいお湯で薄めた物、または自家製のヨーグルトを混ぜた物を飲ませましょう。問題なく飲めたら、1日に1カップまで摂取量を増やしてください。カップ1杯のニンジンジュースが問題なく飲めたら、セロリ、レタス、生のミントの葉のジュースを加えてみましょう。空腹時に飲む必要があるので、朝一番か午後3時頃に飲むのが良いでしょう。

アーモンド粉か、ナッツやたね類を粉状に挽いた物でパンを焼きましょう。

このパンは、次の4種類の材料だけで簡単に作ることができます(作り方は本のレシピの章を参照してください)。1.ナッツ粉、2.卵、3.新鮮な生のカボチャかズッキーニ(皮をむいて種を取り除き、薄くスライスした物)、4.天然油脂適量(ギー、バター、ガチョウかカモの脂肪)と天然の塩適量。まず1日に小さな1切れを患者に食べさせ、徐々に量を増やしてください。

第5ステージ

第4ステージまでの食べ物が全て問題なく食べられたら、加熱調理してピューレ状にしたリンゴを追加してください。

完熟リンゴの皮をむいて芯を取り除き、少量の水を加えて柔らかくなるまで煮ます。煮終わったら適量のギーを加え、すりこぎなどでつぶします。ギーをまだ導入していない場合は、カモかガチョウの脂肪を加えてください。1日にスプーン数杯から始め、反応を観察しましょう。反応がなければ、徐々に食べる量を増やしてください。

生野菜を追加します。まずレタスの柔らかい部分と皮をむいたキュウリから始めてください。

便の状態を観察してください。他と同様に少量から始め、問題なく食べられたら徐々に量を増やしてください。この2つが問題なく食べられたら、ニンジン、トマト、タマネギ、キャベツなどのその他の生野菜を徐々に追加してください。

ニンジン、セロリ、レタス、ミントで作ったジュースを問題なく飲めるようであれば、リンゴ、パイナップル、マンゴーなどの果物を加えましょう。

この段階ではかんきつ類は避けてください。

第6ステージ

第5ステージまでの食べ物を全て問題なく食べられたら、皮をむいた生のリンゴを試してください。徐々に生のフルーツを追加し、ハチミツの量を増やしてください。

GAPS食事療法で許可されている焼いたケーキとその他の甘味類を少しずつ追加してください。焼き菓子を作る際は、ドライフルーツを甘味料として使いましょう。

先に述べたように、患者の便の状態によって、導入食事療法の進行を早めるか、より時間をかけるかが決まります。必ず、下痢が治まり始めてから次のステージに進むようにしてください。患者の敏感度によって、特定の食べ物の導入をこのプログラム内容より遅らせる必要があるかもしれません。導入食事療法を終えた後も、引き続き患者にスープとミートストックを1日に最低1回は飲ませましょう。

導入食事療法を完了し、患者の便の状態が大体正常になったら、フルGAPS食事療法に進んでください。